
私は時々、透明人間になる。
人が大勢集まって何かをやる時、ワイワイ話をしている時。
私は誰からも見えなくなる。
私は確かにここにいるのか、わからなくなる。
人はそれぞれに自分のことでいっぱいいっぱいで、誰かの存在を無視しているつもりはないのだろうと思う。
その人自身も、そこに参加したり、馴染むことで精一杯なのだと思う。
余裕のある人や、気がついて行動できる人は、声をかけてくれる。
それでも、周りの状況が全く分からずに透明人間になるのは、とても居心地が悪い。
手持ち無沙汰になるし、どういう風に振る舞ったものか、とても困ってしまう。
自分から頑張って周りに声をかけるのも、あえて空気を読まないという、とてつもないエネルギーや、パワーがいる。
そんな時に、いつも自分に言い聞かせていた。
「気にしない、気にしない」
でもそれはとても逆効果だった。
気にしないようにしよう、そう思えば思うほど、気になってしまう。
ますますそんな自分が意識されて、しんどくなってしまう。
ある日、ふと、魔法の杖を手に入れた。
「まぁ、いいか」
そう呟くと、力が抜ける。
本当にまぁいいか、という気持ちになる。
周りの人にとっても、自分にとっても、どうしようもない時というのはある。
でも「まぁいいか」で救われる。